扶養の壁は2026年から段階的に見直されます。所得税の「103万円の壁」は160万円に引き上げられる予定で、社会保険の「106万円の壁」も2026年10月以降に撤廃が始まる見込みです。一方で「130万円の壁」は現時点で変更されない予定です。この記事では、経営者や個人事業主が知っておきたい2026年の扶養の壁の変更点を、制度ごとに整理して解説します。
従業員の年収調整や年末調整の実務にどう影響するかも合わせて確認していきましょう。
扶養の壁2026年はどう変わる?結論を先に確認
2026年の扶養の壁は、所得税・社会保険・配偶者控除でそれぞれ異なる動きがあります。結論として、所得税の「103万円の壁」は160万円へ引き上げられ、社会保険の「106万円の壁」は段階的な撤廃に向かい、「130万円の壁」は当面維持される見込みです。
「扶養の壁」という言葉は一つの制度を指すものではありません。所得税の扶養控除、配偶者特別控除、社会保険の被扶養者要件など、複数の制度が絡み合っています。2025年12月に公表された税制改正の内容を踏まえ、2026年から段階的に運用が変わる予定です。
経営者や個人事業主にとっては、パートやアルバイトとして働く従業員・家族の年収調整に直結する話題です。制度の全体像を理解しないまま対応すると、年末調整や給与計算でミスが生じやすくなります。まずは全体像を押さえていきましょう。
2026年に何がどう変わるのか一覧で確認
制度ごとの変更点を整理すると、次のようになります。
| 壁の種類 | 2025年までの基準 | 2026年以降の見込み |
|---|---|---|
| 所得税(扶養控除) | 103万円 | 160万円へ見直し |
| 社会保険(従業員数条件あり) | 106万円 | 2026年10月以降段階的に撤廃 |
| 社会保険(被扶養者全般) | 130万円 | 当面維持の見込み |
| 配偶者特別控除 | 150万円・160万円 | 引き上げの検討あり |
それぞれの制度は所管も根拠法も異なります。所得税は国税庁、社会保険は厚生労働省が所管しており、施行日や対象範囲を個別に確認する必要があります。
そもそも扶養の壁とは?何種類あるのか
扶養の壁とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、世帯全体の収入が実質的に減ってしまう境目のことです。代表的なものだけで4種類以上存在します。
「扶養の壁」という表現は日常語であり、法律上の正式な用語ではありません。そのため制度ごとに基準額や仕組みが異なり、混同されやすい点が誤解の原因になっています。
代表的な扶養の壁にはどんな種類があるか
- 103万円の壁:所得税の扶養控除・配偶者控除に関わる基準
- 106万円の壁:従業員数など一定条件を満たす企業で働く場合の社会保険加入基準
- 130万円の壁:健康保険の被扶養者・国民年金第3号被保険者の基準
- 150万円・160万円の壁:配偶者特別控除の控除額が変動する基準
- 200万円前後の壁:配偶者特別控除がなくなる基準
このうち103万円の壁と150万円・160万円の壁は所得税に関する話です。106万円の壁と130万円の壁は社会保険に関する話であり、まったく別の制度です。両方を同時に意識しないと、思わぬ税負担や保険料負担が生じます。
個人事業主が家族を従業員として雇う場合は、扶養控除だけでなく専従者控除の仕組みも関係します。家族への給与支払いを検討している方は、専従者控除の控除額と要件をわかりやすく解説も参考にしてください。
なぜ2025年から2026年にかけて改正が集中するのか
今回の改正が集中する背景には、物価上昇や最低賃金の上昇があります。基礎控除や給与所得控除の額が長年見直されていなかったため、パート・アルバイトの実質的な労働時間を制約しているという指摘が続いていました。
これを受けて、2025年度の税制改正の議論では所得税の基準額を大きく引き上げる方向で調整が進みました。社会保険についても、2025年に成立した年金制度改正法により、段階的な見直しのスケジュールが示されています。
103万円の壁が2026年に160万円へ見直される仕組みとは?
2026年から、所得税の扶養控除・配偶者控除の基準となる年収は103万円から160万円に見直される予定です。基礎控除と給与所得控除の合計額が引き上げられることによって実現します。
103万円という数字は、給与所得控除の最低額55万円と基礎控除48万円を合計した金額でした。今回の改正では、基礎控除と給与所得控除の両方が拡大される方向で調整が進んでいます。
基礎控除・給与所得控除はどう変わるのか
改正の詳細は今後の政省令や通達で確定しますが、報じられている内容を整理すると、給与所得控除の最低保障額が65万円程度に、基礎控除が58万円〜95万円程度に見直される案が中心となっています。合計すると年収160万円程度までは所得税がかからない計算になります。
| 項目 | 2025年まで | 2026年以降の見込み |
|---|---|---|
| 給与所得控除の最低額 | 55万円 | 65万円程度 |
| 基礎控除 | 48万円 | 58万円〜95万円程度 |
| 合計(壁の目安) | 103万円 | 160万円程度 |
基礎控除の上乗せ幅は年収に応じて段階的に縮小する仕組みが検討されています。高所得層ほど上乗せ額が小さくなる設計です。詳細な数値は財務省や国税庁の公表資料で今後確定していきます。
年末調整の申告書はどう変わるのか
基準額が変わることで、年末調整で従業員に配布する「扶養控除等申告書」の記載基準も変更される見込みです。従業員本人や配偶者の年収見込みを聞き取る際の基準額を、事前に総務・経理担当者間で共有しておく必要があります。
年末調整の還付時期や仕組みについては、年末調整はいつ戻る?還付金の時期と仕組み解説で詳しく解説しています。改正初年度は例年より確認作業が増える可能性があるため、早めに準備しておくと安心です。
106万円の壁は2026年に撤廃される?社会保険の変更点
106万円の壁は、2026年10月以降に段階的な見直しが始まる予定です。従業員数などの企業規模要件が先に撤廃され、収入要件そのものは2027年10月からの撤廃が想定されています。
106万円の壁とは、一定規模以上の企業で週の労働時間や月収などの条件を満たす短時間労働者が、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入対象となる基準です。従来は「従業員数51人以上の企業」という企業規模要件がありました。
106万円の壁の見直しスケジュールはどうなっているか
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年10月 | 企業規模要件の段階的な撤廃開始 |
| 2027年10月 | 収入要件(106万円)の撤廃を想定 |
| 撤廃後 | 週の労働時間など従来の他要件で加入判定 |
収入要件が撤廃されると、106万円という金額そのものは基準として使われなくなります。代わりに週の所定労働時間が20時間以上であるかどうかなど、他の要件で社会保険加入の有無が決まる形に近づいていきます。
企業側は何を準備しておくべきか
- 短時間労働者の労働時間・雇用契約の実態を棚卸しする
- 社会保険加入対象者が増える可能性を前提に人件費を再計算する
- 従業員への説明資料を早めに準備する
- 給与計算ソフトのバージョンアップ時期を確認する
社会保険料の負担増は会社側にも発生します。従業員数の多い事業所ほど影響が大きいため、早い段階でシミュレーションしておくことをおすすめします。制度の詳細は厚生労働省の発表を随時確認してください。
130万円の壁・150万円の壁は2026年も変わらないのか
130万円の壁は、2026年時点で基準額そのものが変更される予定はありません。150万円・160万円の壁(配偶者特別控除)については、103万円の壁の見直しに合わせて調整される可能性があります。
130万円の壁は、健康保険の被扶養者や国民年金第3号被保険者になれるかどうかを決める基準です。106万円の壁とは異なり、企業規模や労働時間の要件がなく、収入だけで判定されるケースに適用されます。
130万円の壁が維持される理由
130万円の壁は健康保険制度全体の被扶養者認定に関わるため、106万円の壁の見直しとは別のスケジュールで検討が進んでいます。現時点の議論では、収入要件の見直しよりも、一時的な収入増加時の柔軟な運用(一定期間は扶養にとどまれる措置など)が中心になっています。
そのため、2026年に「130万円を超えたら即座に扶養を外れる」という基本ルール自体は大きく変わらない可能性が高いといえます。ただし一時的な残業増などへの配慮措置は継続・拡充される見込みです。
150万円・160万円の壁はどう動くか
配偶者特別控除は、年収150万円までは配偶者控除と同額の控除が受けられ、150万円を超えると段階的に控除額が減り、201万円程度でゼロになる仕組みです。103万円の壁の基準が160万円に見直されることに合わせて、150万円・160万円の基準も一定の調整が行われる可能性があります。
配偶者特別控除の基準額がどう変わるかは、2026年分の年末調整資料が公表される時期に確定情報が示される見込みです。経理担当者は国税庁の発表を定期的に確認しておくと安心です。
学生(19歳〜22歳)の扶養の壁はどう変わるのか
19歳から22歳の学生に関する扶養控除は、2025年に「特定親族特別控除」という新しい仕組みが導入され、2026年以降も基準額の見直しが続く見込みです。従来の150万円という基準から拡大される方向です。
大学生の子どもがアルバイトをしている家庭では、子どもの年収が一定額を超えると親の税負担が増える「特定扶養控除」の壁がありました。従来は年収150万円を超えると控除額が段階的に減少する仕組みでした。
特定親族特別控除とはどんな制度か
特定親族特別控除は、19歳〜22歳の親族の年収が一定額を超えても、親の控除額が急激に減らないように段階的な仕組みを設けた制度です。従来より高い年収まで一定の控除が受けられるよう、基準額の見直しが行われています。
この改正により、大学生が学費や生活費のためにアルバイトの時間を増やしても、親の税負担が急に跳ね上がりにくくなります。高校生の扶養控除との違いについては、高校生の扶養控除は103万円の壁で変わる?条件解説で詳しく解説していますので、あわせて確認してください。
家庭で確認すべきポイント
- 子どもの年収が特定親族特別控除の基準内かどうか
- 子ども自身の所得税・住民税が発生するかどうか
- アルバイト先の社会保険加入基準に該当するかどうか
- 奨学金の収入制限に影響しないかどうか
特定親族特別控除は所得税の話であり、社会保険の扶養(130万円の壁など)とは別枠で判定されます。両方の基準を同時に確認することが大切です。
経営者・個人事業主が2026年の扶養の壁改正で注意すべきことは?
経営者や個人事業主は、従業員の年収調整の相談が増えること、年末調整・給与計算の基準額変更への対応、そして家族従業員への給与設計の見直しという3点に注意が必要です。
扶養の壁の改正は、雇用する側にとっても実務負担の増加要因になります。単に制度が変わるという知識だけでなく、社内のオペレーションをどう調整するかが問われます。
従業員から相談が増える理由
基準額が変わると、パート・アルバイトの従業員は「今年はどこまで働いていいのか」という相談を経営者や総務担当者にすることが増えます。特に改正の初年度は基準額が複数存在し、混乱しやすい時期です。
相談に対して正確に答えるためには、所得税・社会保険それぞれの基準額と施行時期を分けて説明できるようにしておく必要があります。誤った説明をすると、後から従業員本人が想定外の税負担や保険料負担を負う可能性があります。
個人事業主が家族を雇う場合の注意点
個人事業主が配偶者や子どもを従業員として雇用している場合、青色事業専従者給与や白色申告の事業専従者控除の適用と、扶養控除の適用は同時に受けられない仕組みになっています。改正後の基準額でも、この基本ルールは変わりません。
家族への給与額を決める際は、扶養控除を使うか専従者給与を使うか、どちらが世帯全体で有利かを毎年シミュレーションすることが大切です。個人事業主の税負担全体を見直したい場合は、個人事業主の節税完全ガイド|経費・控除の使い方も参考になります。
副業を持つ従業員への影響
近年は副業を持つ従業員も増えています。本業の年末調整だけでなく、副業分の収入によって扶養の基準を超えてしまうケースもあります。副業と年末調整の関係については、年末調整と副業の関係は?確定申告の要否を解説で確認しておくと安心です。
従業員の年収調整にどう対応すればいい?チェックリスト
従業員の年収調整に対応するには、社内の情報共有体制と個別のヒアリングを組み合わせることが有効です。改正初年度は例年より早めの準備が求められます。
制度が複雑になるほど、従業員任せにすると誤解やトラブルが生じやすくなります。経営者側から一定の情報提供を行うことが、後々のトラブル防止につながります。
経営者・総務担当者が確認すべき項目
- 従業員一人ひとりの現在の年収見込みを把握する
- 所得税の壁(103万円→160万円)と社会保険の壁(106万円・130万円)を分けて説明資料を作る
- 給与計算ソフトが2026年の基準額に対応しているか確認する
- 年末調整の申告書のフォーマット変更に対応する
- 短時間労働者の労働時間・雇用契約を棚卸しする
- 社会保険加入対象者が増えた場合の人件費を再計算する
- 税理士・社会保険労務士への相談時期を決めておく
費用面ではどれくらいの負担を想定すべきか
社会保険の適用対象者が増える場合、会社負担分の社会保険料が新たに発生します。目安として、月収10万円〜15万円のパート従業員が新たに加入すると、会社負担は月1万5,000円〜2万3,000円程度増える計算になります。人数が多い事業所では、年間の総人件費への影響を早めに試算しておくことが重要です。
税理士に年末調整や給与計算の見直しを相談する場合、スポット相談で1回あたり1万円〜3万円程度、顧問契約に組み込む場合は月額顧問料に含まれるケースが一般的です。事業所の規模や依頼内容によって費用は変動するため、事前に見積もりを取ることをおすすめします。
税理士の相談料の考え方については、税理士の相談料の相場と賢い活用法を徹底解説で詳しく紹介しています。
2026年の改正にどう備えればいいのか
2026年の扶養の壁改正に備えるには、制度の施行時期を正確に把握し、社内規程や給与計算の仕組みを早めに見直すことが大切です。改正のたびに慌てて対応すると、従業員との信頼関係にも影響します。
今から準備しておきたいこと
- 2026年分の所得税基準額の確定情報を国税庁の発表で確認する
- 106万円の壁撤廃スケジュールの詳細を厚生労働省の発表で確認する
- 給与計算システムのアップデート時期を確認する
- 従業員向けの説明会や資料配布のタイミングを決める
制度の詳細は今後の政省令や通達で確定していく部分が多く残っています。最新情報は国税庁の公表資料で継続的に確認することが欠かせません。
税理士に相談するメリットはあるか
税理士に相談すると、自社の給与体系に合わせた具体的な影響額の試算や、年末調整の実務対応について助言を受けられます。改正初年度は解釈が固まりきっていない部分もあるため、専門家の最新情報を頼るメリットは大きいといえます。
顧問契約を結んでいない場合でも、年末調整の時期だけスポットで相談することも可能です。税理士との顧問契約の相場感については、税理士の費用相場が丸わかり!選び方と節約術を参考にしてください。
扶養の壁を超えて働いた方が得なケースはあるのか?
扶養の壁を超えて働いた方が世帯収入が増えるケースは実際にあります。目安として、壁を超えた分の税金や社会保険料を差し引いても、手取りの増加額がプラスになる年収帯が存在します。
「壁を超えると損をする」というイメージが強いため、年収を無理に抑える働き方を選ぶ方が少なくありません。しかし所得税の壁と社会保険の壁では、超えた際の負担の性質がまったく異なります。損益の分岐点を正しく理解しておくことが大切です。
所得税の壁を超えた場合の負担はどれくらいか
所得税の壁(103万円、2026年以降は160万円の見込み)を超えても、超えた金額に対して段階的に所得税がかかるだけです。年収が壁を1万円超えたからといって、収入全体に課税されるわけではありません。したがって所得税の壁を超えることによる負担増は比較的緩やかです。
一方で配偶者の税負担にも影響が及びます。配偶者特別控除の段階的な減少により、世帯全体で見ると数万円程度の負担増になる場合があります。ただし本人の収入増加分の方が負担増を上回ることが多く、世帯収入としてはプラスになる傾向があります。
社会保険の壁を超えた場合の負担はどれくらいか
社会保険の壁(106万円・130万円)を超える場合は、所得税の壁とは異なり注意が必要です。社会保険の被扶養者から外れると、年収に応じて健康保険料と厚生年金保険料の負担が一気に発生します。目安として、年収130万円前後の方が社会保険に加入すると、年間15万円〜20万円程度の保険料負担が新たに生じる計算になります。
この負担増を相殺するには、社会保険の壁を超えた分だけ年収をさらに一定額まで増やす必要があります。目安として年収を160万円〜170万円程度まで増やせば、保険料負担分を吸収して手取りが増加に転じるケースが多いといわれています。逆に壁をわずかに超えただけの年収では、手取りが一時的に減ってしまう可能性があります。
| 年収の状況 | 手取りへの影響の傾向 |
|---|---|
| 103万円〜130万円の間で働く | 所得税は緩やかに増えるが世帯収入は増加傾向 |
| 130万円をわずかに超える | 社会保険料の負担発生で手取りが一時的に減る可能性 |
| 160万円〜170万円程度まで増やす | 保険料負担を吸収し手取りが増加に転じる傾向 |
この損益分岐点は家族構成や勤務先の給与体系によって変動します。従業員から相談を受けた場合は、単純に「壁を超えない方が得」と案内するのではなく、具体的な年収レンジで手取りがどう変化するかを一緒に確認する姿勢が求められます。
扶養の壁でよくある失敗事例と対処法
扶養の壁に関する失敗の多くは、制度の勘違いや確認不足から生じます。代表的な失敗事例を知っておくことで、同じミスを避けやすくなります。
年の途中で年収見込みが変わったのに申告し忘れた
年末調整の時点で提出した扶養控除等申告書の内容と、実際の年収が大きく異なってしまうケースは少なくありません。例えば、当初は年収100万円程度の予定だったパート従業員が、繁忙期の残業増加で130万円を超えてしまう場合です。
この場合、会社側が年の途中で従業員本人に年収見込みの再確認を依頼していないと、年末調整で控除額の誤りが発覚し、従業員が翌年に追加で税負担を負う事態になります。対処法としては、夏から秋にかけて一度年収見込みの中間確認を行う運用をルール化しておくことが有効です。
複数の会社で働いていることを一方の会社に伝えていなかった
従業員が複数の勤務先を持つ場合、それぞれの勤務先が扶養の判定を独立して行ってしまうと、実際の年収が壁を超えているのに扶養扱いが続いてしまう失敗が起こります。特に社会保険の130万円の壁は、複数の勤務先の収入を合算して判定するため、片方の勤務先だけでは正確な判定ができません。
対処法としては、複数の勤務先がある従業員には自己申告を必ず求め、扶養している配偶者や家族がいる企業側は年に一度状況を確認する仕組みを設けることが望まれます。
扶養控除と専従者給与を両方使おうとしてしまった
個人事業主の家庭でよくある失敗として、家族を専従者として給与を支払いながら、同時に扶養控除も適用しようとしてしまうケースがあります。専従者給与を受け取っている家族は、扶養控除の対象にはなりません。
この点を知らずに確定申告を行うと、後から税務署からの指摘を受けて修正申告が必要になる場合があります。専従者控除と扶養控除のどちらを選ぶべきかは、事前にシミュレーションしておくことが失敗の防止につながります。専従者に関する要件は専従者控除とは?控除額と要件をわかりやすく解説で確認できます。
失敗を防ぐためのチェック項目
- 年収見込みは年に1回以上、途中で再確認する
- 複数勤務先がある従業員には自己申告を求める
- 専従者給与と扶養控除は同時に使えないことを家族間で共有する
- 改正初年度は基準額の切り替え時期を社内で周知する
- 確定申告で誤りに気づいた場合は早めに修正申告する
確定申告後に誤りが見つかった場合の対処法については、確定申告を間違えたらどうする?対処法と費用相場で詳しく解説しています。
複数の勤務先がある場合の扶養の壁はどう判定するのか
複数の勤務先で働く場合、所得税の壁は全ての勤務先の年収を合算して判定し、社会保険の壁も同様に合算した収入で判定します。1社ごとの年収だけを見て判断すると誤りが生じやすい点に注意が必要です。
所得税の壁における合算の考え方
所得税の扶養控除・配偶者特別控除の判定に使う年収は、その年に得た給与収入や事業収入などをすべて合計した金額です。複数の勤務先から給与を得ている場合、主たる勤務先で年末調整を行い、従たる勤務先の給与については別途確定申告で合算する必要があります。
この確定申告を忘れると、実際の年収が壁を超えているにもかかわらず扶養扱いが続いてしまい、後から税務署の確認によって扶養控除の適用誤りが発覚するケースがあります。副業を持つ従業員への対応は、年末調整と副業の関係は?確定申告の要否を解説も参考にしてください。
社会保険の壁における合算の考え方
社会保険の被扶養者認定においても、複数の勤務先からの収入は合算して判定されます。健康保険組合や年金事務所は、被扶養者の年収を確認する際に全ての収入源を申告させる仕組みを取っています。
106万円の壁については、企業規模要件や労働時間要件が勤務先ごとに個別判定される部分もあるため、片方の勤務先だけで社会保険加入対象になるケースと、両方を合算して初めて対象になるケースが混在します。判定が複雑になりやすいため、従業員自身が正確に状況を把握しておくことが欠かせません。
| 判定対象 | 合算の考え方 |
|---|---|
| 所得税の扶養控除 | 全ての給与・事業収入を合算して判定 |
| 106万円の壁 | 勤務先ごとの要件と収入の両面で判定 |
| 130万円の壁 | 全ての勤務先の収入を合算して判定 |
個人事業主やフリーランスが扶養に入る場合の注意点
個人事業主やフリーランスとして働く家族が扶養に入る場合、判定に使う金額は売上ではなく所得(売上から経費を引いた金額)である点に注意が必要です。所得税の扶養控除は所得基準で判定されるため、売上が130万円を超えていても、経費を引いた所得が基準以下であれば扶養に入れる場合があります。
一方で社会保険の被扶養者認定は、健康保険組合によって売上ベースで判定される場合と所得ベースで判定される場合があり、統一されたルールがありません。家族に個人事業主がいる場合は、加入している健康保険組合に個別に確認することをおすすめします。フリーランスの確定申告の基本については、確定申告を自分でする方法とは?手順と注意点を徹底解説で確認できます。
扶養の壁2026年の改正は他の控除や制度にどう影響するのか
扶養の壁の改正は、基礎控除や給与所得控除の見直しを伴うため、医療費控除や iDeCo(個人型年金)など他の税制にも間接的な影響が及びます。控除の全体像を合わせて見直しておくことが大切です。
医療費控除への影響はあるのか
医療費控除は、支払った医療費から一定額を差し引いた金額を所得から控除する制度です。基礎控除自体が引き上げられても、医療費控除の計算方法(10万円または所得の5%のいずれか低い金額を差し引く仕組み)そのものは変更されない見込みです。
ただし、基礎控除の引き上げによって所得税が発生するボーダーラインが上がるため、医療費控除を申告しても実際の還付額が変わってくる家庭も出てくると考えられます。医療費控除の申告方法については、医療費控除はスマホで申告できる?やり方解説で確認できます。
iDeCoやふるさと納税への影響はあるのか
iDeCoの掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれる仕組みで、基礎控除の見直しとは直接連動しません。しかし、基礎控除や給与所得控除が増えて所得税額そのものが下がる家庭では、iDeCoによる税負担軽減の効果(節税メリット)が相対的に小さくなる可能性があります。
ふるさと納税の控除上限額も、所得税・住民税の計算をもとに算出されるため、基準額の見直しによって控除上限額が変動する家庭が出てきます。改正後は、これまでの上限額の感覚のまま寄付を行うと、一部が自己負担になってしまう可能性があるため、年末が近づいたら改めて上限額を確認することをおすすめします。
住民税への影響も忘れずに確認する
今回の議論の中心は所得税の基準額ですが、住民税の非課税基準や控除額についても連動した見直しが行われる可能性があります。住民税は所得税より基準額が低く設定されているため、所得税の壁を超えなくても住民税だけ発生するというケースは、改正後も一定数残ると考えられます。
- 医療費控除の計算方法自体は大きく変わらない見込み
- iDeCoの控除は基礎控除の見直しと別枠で計算される
- ふるさと納税の上限額は毎年の所得に応じて再確認が必要
- 住民税の基準額は所得税と異なるタイミングで見直される可能性がある
複数の制度が絡み合うため、家庭ごとに影響の出方が異なります。控除全体の見直しをまとめて相談したい場合は、確定申告に必要な書類の準備方法から確認しておくと、税理士への相談もスムーズになります。書類の準備については確定申告に何が必要?書類と準備を徹底解説で解説しています。
扶養の壁を超えて働いた方が得なケースはあるのか?
扶養の壁を超えて働いた方が得になるケースは、超えた分の収入増加が税負担・保険料負担の増加を上回る場合です。特に130万円の壁を大きく超える働き方を選ぶと、世帯全体の収入が結果的に増えることがあります。
扶養の壁は「超えた瞬間に大きく損をする」というイメージが強く持たれています。しかし実際には、壁の種類によって損失の大きさが異なり、少し超えるだけでは損になりやすい一方、大きく超えると得に転じる場合があります。
壁を少し超えると損になりやすい理由
106万円の壁や130万円の壁を数万円だけ超えると、新たに社会保険料の負担が発生します。年間で15万円〜25万円程度の保険料負担が生じるため、収入の増加分がそのまま相殺されてしまうことがあります。この「少し超えると損になる」状態が、扶養の壁が働き控えを招く原因といわれています。
大きく超えると得になりやすい理由
社会保険料を負担しても、将来の年金受給額が増えるというメリットがあります。厚生年金に加入すると、老齢年金の受給額が上乗せされるため、長期的に見れば負担した保険料の一部が将来戻ってくる計算になります。また、健康保険の傷病手当金や出産手当金といった給付が受けられるようになる点も、社会保険加入のメリットです。
具体的には、年収を160万円〜200万円程度まで増やせる状況であれば、保険料負担を差し引いても世帯全体の手取りが増えるケースが多く見られます。逆に年収130万円前後で働き方を止めてしまうと、負担と収入増加が拮抗しやすく、判断が難しくなります。
| 年収の目安 | 負担の増減 | 世帯収入への影響 |
|---|---|---|
| 106万円〜130万円未満 | 社会保険料負担が新たに発生 | 手取りが減少しやすい |
| 130万円〜160万円程度 | 負担と収入増加がほぼ相殺 | ほぼ変化なしのケースが多い |
| 160万円以上 | 収入増加が負担を上回りやすい | 手取りが増加しやすい |
この判断は家庭の状況や本人の働き方の希望によって変わります。一律に「壁を超えるべき」とは言えないため、年収ごとの負担額を具体的に試算した上で決めることをおすすめします。
扶養の壁でよくある失敗事例と対処法
扶養の壁に関するよくある失敗は、年収の見込みを甘く見積もったことによる税負担・保険料負担の想定外の発生です。事前の確認不足が主な原因になっています。
制度を正しく理解していても、実際の年収見通しが変わることで壁を超えてしまうケースは少なくありません。ここでは代表的な失敗事例と、その対処法を紹介します。
失敗事例1:ボーナスや残業代を年収に含めていなかった
パート従業員が月々の給与だけで年収を計算し、ボーナスや残業代を含めずに扶養の範囲内だと思い込んでいたケースです。年末になって想定より年収が高くなり、扶養から外れて追加の税負担や保険料負担が発生することがあります。
対処法としては、年の途中で年収の見込みを定期的に確認し、残業やボーナスが発生した時点で早めに再計算することが有効です。
失敗事例2:複数の壁を混同して説明してしまった
経営者や総務担当者が、所得税の103万円の壁と社会保険の130万円の壁を混同して従業員に説明してしまう事例です。誤った基準額を伝えると、従業員が想定外の負担を負うことになります。
対処法としては、説明資料を制度ごとに分けて作成し、所得税の壁と社会保険の壁を明確に区別して伝えることが重要です。
失敗事例3:家族従業員の給与設定を毎年見直していなかった
個人事業主が家族を従業員として雇用している場合、専従者給与の金額を毎年見直さずに固定してしまい、扶養控除が使えなくなっていたことに後から気づくケースがあります。
- 年の途中で従業員の年収見込みを再確認する仕組みを作る
- 所得税・社会保険の基準額を分けて記載した資料を用意する
- 家族従業員の給与額を毎年見直すタイミングを決めておく
- 基準額を超えそうな従業員には早めに個別で相談する
これらの失敗は、早期の情報共有と定期的な確認によって防ぐことができます。特に改正が集中する2026年は、例年よりも慎重な確認体制が求められます。
複数の勤務先がある場合の扶養の壁はどう判定するのか
複数の勤務先で働く場合の扶養の壁は、所得税と社会保険で判定方法が異なります。所得税は全ての勤務先の収入を合算して判定し、社会保険は主にメインの勤務先の条件で加入義務が判定されます。
近年は副業や複数のパート先を持つ働き方が増えており、扶養の壁の判定が複雑になりやすい状況です。制度ごとの判定方法を正しく理解しておくことが欠かせません。
所得税の扶養の壁はどう判定するか
所得税の扶養控除や配偶者控除の判定では、複数の勤務先から得た給与収入をすべて合算して年収を計算します。一つの勤務先では103万円(2026年以降は160万円)を超えていなくても、複数の勤務先の合計で超えていれば扶養の対象外になります。
年末調整はメインの勤務先でしか行えないため、副業分の収入については本人が確定申告を行い、正確な年収を申告する必要があります。副業と確定申告の関係については、年末調整と副業の関係は?確定申告の要否を解説で詳しく解説しています。
社会保険の扶養の壁はどう判定するか
社会保険の106万円の壁は、原則として一定の要件を満たす一つの勤務先ごとに判定されます。複数の勤務先の労働時間や賃金を合算する仕組みは基本的には採用されていません。
一方で130万円の壁は、複数の勤務先からの収入を合算した年間収入で判定されるのが一般的です。健康保険組合や共済組合によって運用が異なる場合があるため、加入している健康保険の窓口に確認することをおすすめします。
| 制度 | 複数勤務先の扱い |
|---|---|
| 所得税の扶養控除 | 全ての勤務先の収入を合算して判定 |
| 106万円の壁 | 原則として勤務先ごとに個別判定 |
| 130万円の壁 | 複数勤務先の収入を合算して判定 |
制度ごとに合算の有無が異なるため、複数の勤務先を持つ従業員がいる場合は、税金と社会保険を分けて確認する姿勢が欠かせません。
扶養の壁2026年の改正は他の控除や制度にどう影響するのか
2026年の扶養の壁の改正は、基礎控除や給与所得控除の見直しと連動しているため、扶養控除以外の税制にも影響が及びます。医療費控除や住宅ローン控除など、所得金額を基準に判定する制度全般に波及する可能性があります。
基礎控除の額が変わると、所得税額そのものの計算式が変わります。そのため扶養の壁に直接関係しない制度であっても、間接的に影響を受けるケースが出てきます。
所得金額に応じて変動する控除にはどんな影響があるか
医療費控除は、原則として支払った医療費から一定額を差し引いて計算しますが、所得金額が低い場合は差し引く金額が少なくなる仕組みがあります。基礎控除の見直しによって課税所得の計算が変わるため、医療費控除を申告する際の有利・不利にもわずかな影響が出る可能性があります。
医療費控除の申告方法については、医療費控除はスマホで申告できる?やり方解説で確認できます。
住民税への影響はあるのか
今回の見直しは主に所得税の基準額に関するものであり、住民税の非課税基準額(一般的に年収100万円前後とされる基準)は所得税とは別に定められています。住民税の基準額が同時に見直されるかどうかは、各自治体や総務省の発表を確認する必要があります。所得税の壁だけが変わり、住民税の壁がそのままというねじれが生じる可能性があるため、家計への影響を説明する際は両方を分けて伝えることが大切です。
企業の税務・労務管理全体への影響
- 年末調整の申告書フォーマットの変更対応
- 給与計算システムの控除額パラメータの更新
- 住民税の特別徴収額の見直しへの対応
- 家族従業員の給与設計や専従者給与の再検討
控除額の基準が変わることで、経理・総務部門が確認すべき項目は例年より増える見込みです。改正内容が固まった段階で、社内の運用フローを一度整理しておくと、実務上の混乱を避けやすくなります。
よくある質問
所得税の「103万円の壁」は2026年から160万円に見直される予定です。ただし社会保険の130万円の壁は変更されない見込みで、106万円の壁は2026年10月以降に段階的な見直しが予定されています。制度ごとに時期が異なる点に注意してください。
年金制度改正法により、企業規模要件は2026年10月から段階的に撤廃され、収入要件(106万円)は2027年10月からの撤廃が予定されています。詳細な施行日は今後の政省令で確定するため、最新情報の確認が必要です。
健康保険の被扶養者や国民年金第3号被保険者の130万円の壁は、2026年時点で見直しの予定はありません。所得税の壁とは別の制度なので、両方を混同しないよう注意してください。
制度改正の内容を正しく伝え、年収の見込みを一緒に確認することが大切です。税額と社会保険料の両方に影響するため、税理士や社会保険労務士に相談しながら対応すると安心です。
税理士は所得税の扶養控除や年末調整の実務、給与計算への影響について相談に対応できます。社会保険の要件変更については社会保険労務士との連携が必要な場合もあります。
まとめ
2026年の扶養の壁は、所得税の103万円の壁が160万円へ見直され、社会保険の106万円の壁は2026年10月以降に段階的な撤廃が始まる見込みです。一方で130万円の壁は当面維持される予定であり、制度ごとに基準額や施行時期が異なります。
経営者や個人事業主にとっては、従業員からの相談対応、年末調整の実務変更、家族従業員の給与設計の見直しなど、対応すべき事項が多岐にわたります。改正初年度は情報が段階的に確定していくため、国税庁や厚生労働省の公表資料をこまめに確認することが欠かせません。
制度が複雑になるほど、自社だけで正確に判断することは難しくなります。早めに税理士へ相談し、自社の状況に合わせた対応方針を固めておくことをおすすめします。

